水結村

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岡山県の山岳地にひっそりと存在する水結村。

 

その名前は清らかな水が流れるような静けさを漂わせるが、この村には伝承があった。

 

「初夏の山には近づくな」と。

 

村の長老たちは口を揃えて、何度も警告してきた。

 

彼らの言葉は、村の外の人々には単なる昔話や迷信に思えた。

 

しかし、村の人々にとって、その警告は真剣なものだった。

 

この伝承に耳を傾けず、大学の山岳部に所属するメンバーたちは、ただのハイキング目的で水結村の山を登ることを決めた。

 

メンバーは5人。リーダーの高山淳(あつし)、活発な女学生の飯塚萌絵、小林仁(ひとし)、森里隼人(はやと)、そしてもう一人、高橋一(はじめ)。

 

みんなは、軽い気持ちで山登りを始めた。

 

初夏の山は、晴れ渡り、風も爽やかだった。

 

参道に咲く色とりどりの山花が辺り一面に広がり、舞い飛ぶ蝶たちがその美しさをさらに引き立てていた。

 

登山道を歩いていると、気分はどんどん高揚し、皆は自然の美しさに魅了されていた。

 

リーダーの高山は、道を引っ張りながら、仲間たちに声をかけ続けた。

 

「ほら、みんな見て!あの花、きれいだな。」

 

「蝶もたくさん飛んでる。こんなにたくさんの蝶を見たのは初めてだ。」

 

萌絵が楽しそうに言うと、小林が冗談めかして言った。

 

「蝶が寄ってきたらどうしよう。吸血鬼みたいに血を吸われたりして。」

 

皆は笑って答える。

 

「まあ、蝶くらいじゃ何も心配ないよ。」

 

それぞれが気軽に会話しながら進んでいった。

 

しかし、その平和な日常は、突然、破られることになる。

 

「高橋、気をつけろ!」

 

高山淳の叫び声が響き渡った。

 

前方を歩いていた高橋一が、突然、落石に襲われたのだ。

 

山道に落ちた大きな岩が、高橋の右足を直撃し、彼はその場に崩れ落ちた。

 

高橋は激痛に顔をゆがめ、足元から流れる血が、周囲を赤く染めていった。

 

「やばい、早く救助を呼ばなきゃ!」高山は慌てて携帯電話を取り出したが、山中では電波が届かない。

 

完全に圏外で、どうすることもできなかった。

 

「何とかしなきゃ!」萌絵は震えながら、高橋に駆け寄った。

 

その周囲には、蝶が飛び交っており、高橋の血に引き寄せられるように、蝶たちが集まり始めた。

 

蝶たちは、傷ついた人間の血に引き寄せられ、ますますその数を増していった。

 

高山は恐怖を感じながら、何とかして助けを呼ぼうと必死になった。

 

「高橋、大丈夫か?」高山は彼に声をかけたが、高橋はすでに意識が遠のいていた。

 

彼の足元に、潰れた蝶が横たわっているのが見えた。

 

その瞬間、周囲で何匹かの蝶が殺されると、他の蝶たちが一斉に集まり始め、血の匂いに引き寄せられるように、さらに多くの蝶たちが群がってきた。

 

しかも、蝶を傷つけたり殺したりすると、その蝶と同じ部分が同じように傷つけられるという奇妙な現象が始まった。

 

「くそっ、どうしよう…」高山は焦りながらも、他のメンバーに状況を確認し、連絡を試み続けた。

 

しかし、やはり電話は繋がらない。

 

次第に周囲の蝶が多く集まり、血の匂いに引き寄せられるように群がり始めた。

 

「うわっ、うっとうしい!」小林仁は怒ったように言った。

 

蝶たちが高橋の血に群がるのを見て、手で振り払うように叩きつけ、潰してしまった。

 

その瞬間、蝶たちは止まるどころか、さらに大量に集まってきた。

 

突然、空気が一変した。ゴロゴロと大きな音が響き、岩が崩れ、再び落石が降り注いだ。

 

小林はそれを避けようとしたが、間に合わず、巨石に頭部を打たれて即死した。

 

彼が踏みつけた蝶と同じ部分を、彼自身も踏み潰されるようにして死んでいった。

 

小林の体に押しつぶされた蝶と同じように、彼もまた同じように潰れた。

 

「小林!」萌絵は叫び声を上げたが、次の瞬間、足元に大きな岩が落ち、彼女も倒れた。

 

痛みと恐怖で視界がぼやけ、意識が遠のいていく。

 

残されたのは、高山淳と萌絵だけ。高橋はすでに意識を失い、動けない状態だ。

 

高山は必死に思いを巡らせ、助けを呼ぶ方法を探し続けたが、電話は繋がらない。

 

「くそっ、こんなところで…」高山は口をつぶやきながら、森里隼人に言った。

 

「隼人、下山して助けを呼んできてくれ!」

 

隼人はすぐに駆け下りようとしたが、急いでいたのか足を踏み外し、崖から滑落してしまった。

 

転げ落ちる隼人の目の前には、蝶の死骸が転がっていた。その瞬間、隼人は完全に消えていった。

 

残された高山と萌絵は、どうにかして生き延びるための最後の手段を講じることに決めた。

 

二人はテントを張ることを決意し、蝶たちが近づかないように対策を講じた。

 

だが、蝶たちは容赦なく集まり始め、二人の血に群がった。

 

しばらくして、遠くから足音が近づいてきた。

 

誰かが助けに来てくれたのかもしれないと、高山と萌絵は希望を抱いて顔を出した。

 

しかし、そこには異常な光景が広がっていた。

 

その登山者は、頭に無数の蝶を寄せ集め、目は白く、口を開けたまま歩いていた。

 

見るからに異常な姿に変わり果てており、まるで人間とは思えない存在だった。

 

その登山者は無言でテントに近づき、無理やりテントを壊して二人を襲ってきた。

 

「う、うわっ!」高山はその異常な登山者に抵抗しようとしたが、圧倒的な力に押され、あっけなく頭を殴られ、意識を失ってしまった。

 

目を覚ました時、萌絵は病室に横たわっていた。

 

頭部と足に負傷を負っていたが、命に別状はないと医師に告げられた。

 

救助隊が到着したのは、家族が通報してくれたおかげだった。

 

彼女は無事に助けられたのだ。

 

警察の話によると、高橋、一、仁、隼人の4人はすでに死亡しており、山中で発見されたという。

 

特に、高山淳の死体には異常があった。

 

彼は、萌絵を背負いながら避難しようとしたが、その途中で力尽き、萌絵にかぶさるように亡くなった。

 

彼の背中には、無数の蝶の死骸がくっついていたという。

 

萌絵は、後に村の長老から言い伝えを聞いた。

 

「初夏の山に入る者は、紫色の蝶に近づいてはならない。」蝶たちは、生者の血を吸い、死者の魂を食らう存在だったのだと。

 

その言葉を聞いた時、萌絵はようやく理解した。

 

この山には、蝶たちが命を食べ、死者の魂を吸い取る存在であることを。

 

そして、それはもう、誰にもどうすることもできなかった。

 

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