闇呑村

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闇呑村——それは岡山県北部の深い山中に位置する、地図にも載らない集落だという。

 

私がその村の噂を初めて耳にしたのは、大学のサークル合宿で訪れた岡山の温泉宿でのことだった。

 

酒に酔った地元の老人が、私たち学生に向かって語り始めたのだ。

 

「闇呑村には、決して足を踏み入れてはならん。あそこは人を食う村じゃ。

 

月の出ない夜に迷い込んだ者は、二度と戻ってこれん...」

 

老人の話によると、闇呑村は江戸時代末期に飢饉から逃れるために山奥に移住した人々が作った集落だという。

 

しかし厳しい自然環境の中、食料が尽きた村人たちは共食いを始め、それが村の習慣となってしまったとか。

 

明治時代に入ってからは政府の調査が入ったものの、調査員は全員行方不明になり、以来その地域は「立ち入り禁止区域」として封鎖されたとのことだった。

 

もちろん、私たちはそんな話を酒席の戯言として受け流した。

 

だが、帰り道に立ち寄った地元の古書店で偶然見つけた古い地図には、確かに「闇呑村」と書かれた場所が記されていたのだ。

 

それから数ヶ月後、私は大学の民俗学研究の一環として、岡山の伝説を調査することになった。

 

そして思い出したのが、あの老人の語った闇呑村の話だった。

 

半信半疑ながらも、学術的好奇心から現地調査を決意した私は、友人の健太と麻美を誘い、三人で岡山へと向かった。

 

古い地図を頼りに山道を進むこと数時間。

 

やがて私たちは、鬱蒼とした杉林の中に一本の獣道を見つけた。

 

道標はなく、GPS信号も途切れがちだったが、地図の位置関係から考えて、この先に闇呑村があるはずだった。

 

「ねえ、やっぱりやめない?なんか嫌な予感がする」と麻美が不安そうに言った。

 

「せっかく来たんだから、少しだけでも見ていこうよ」健太が答える。

 

結局、私たちは先に進むことにした。

 

獣道を歩くこと約30分、突然視界が開け、そこには十数軒の古い民家が点在する小さな集落が現れた。

 

家々は明らかに人が住んでいる様子はなく、屋根は崩れ、壁は苔むしていた。

 

だが不思議なことに、いくつかの家の窓からは薄ぼんやりと明かりが漏れているように見えた。

 

「誰か住んでるの...?」麻美が小声で言った。

 

集落の中心には、小さな祠があって、そこに祀られていたのは、肉を食いちぎるような形相の異様な顔の仏像だった。

 

その周りには、動物の骨らしきものが散乱していた...

 

いや、よく見ると、それは人間の骨のようにも見えた。

 

「おい、これマジでやばいんじゃ...」健太の声が震えた。

 

その時だった。

 

遠くから、かすかに人の声が聞こえてきた。

 

三人で耳を澄ますと、それは歌声のようだった。

 

声の方向を見ると、集落の奥にある最も大きな家から、明かりとともに声が漏れ出ていた。

 

好奇心に負けた私たちは、その家に近づいた。

 

窓から中を覗くと、そこには十人ほどの村人が円座になって何かの儀式を行っているように見えた。

 

彼らは一様に痩せこけた姿で、肌は異様に白く、目は窪んでいた。

 

そして儀式の中央には、大きな鍋が置かれていた。

 

「何をしてるんだろう...」

 

私が小声でつぶやいた瞬間、中にいた一人の老婆が、まるで気配を感じたかのように窓の方を振り向いた。

 

老婆の目と私の目が合った。

 

その瞬間、老婆は異様な形相で叫んだ。

 

「よそ者じゃ!よそ者が来たぞ!」

 

次の瞬間、家の中が騒然となり、村人たちが一斉に外へ飛び出してきた。

 

その中の三人が特に目を引いた。

 

彼らの服は血で真っ赤に染まり、手には鋭い斧を握っていた。

 

彼らは叫びながら、私たちに向かって走り寄ってきた。

 

「逃げろ!」

 

私の叫びと同時に、三人は来た道を目指して必死に走り出した。

 

背後からは村人たちの奇妙な詠唱のような声と、斧を振り上げた三人の足音が迫ってきた。

 

闇の中を走りながら、私は気づいた。道が違う。

 

来た時の道のはずなのに、どこか違う。

 

そして気づけば私たちは、知らない山道を走り続けていた。

 

「どうしよう...迷った...」健太が息を切らせて言った。

 

その時、麻美が指さした先に、かすかな明かりが見えた。

 

藁にも縋る思いで、私たちはその明かりに向かって走った。

 

それは小さな祠のようなもので、祠の中には、一体の地蔵が安置されていた。

 

不思議なことに、祠の前に来た途端、後ろから聞こえていた村人たちの声が嘘のように消えた。

 

振り返ると、そこには誰もいなかった。

 

ただ遠くに、村の方向から炎が燃え上がる様子だけが見えた。

 

私たちは祠の前で一晩を過ごし、夜が明けると無事に山を下りることができた。

 

地元の警察に闇呑村での出来事を報告したが、その位置を示す地図を広げても、該当する場所には何も記されておらず、

 

「そんな村は存在しない」と一蹴された。

 

私たちが体験したことは、集団幻覚だったのだろうか。

 

それとも本当に闇呑村は存在するのか。

 

その真相は今も闇の中だ。

 

ただ一つ確かなことは、あの夜以来、私たちの夢に同じ悪夢が繰り返し現れること。

 

痩せこけた村人たちが円座になり、大きな鍋を囲む光景と、血に染まった斧を持つ三人の姿が...。

 

そして時々、自分の肌が少しずつ白くなっていく気がするのだ。

 

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